博多→長崎→博多

この日は博多から長崎まで、日帰り旅行。長崎に行くとなった途端、頭の中で内山田洋とクール・ファイブ長崎は今日も雨だったワワワワーとエンドレスで歌い続ける夫婦。内山田洋とクールファイブの歌声に合わせ、走馬灯のようにくるくるとちゃんぽんが回るよワワワワー。
今回も恐ろしく長いので畳みます。本当に長いのですみません…。
 
前日、21時台に寝てしまった夫と、日付を跨ぐ頃に眠った妻とで目覚めが違う朝。取り敢えず温泉入って目を覚ます。朝風呂はいいなあ。
ドーミーインの冷蔵庫は部屋を出るとスイッチが切れてしまうので、風呂上りに食べる筈だったブラックモンブラン(九州の人たちが愛するアイスクリーム)を朝から食べる。うまー。本州の人たちが目にするところのチョコバリによく似ている。やあ血糖値がみるみる上がる、上がるぞフハハハハ!
 


    

 
さて、朝食にはJR博多駅にベーカリー・スベンスカというドイツ系パン屋があると調べていた。プレッツェルが大好きなのでそれはそれは楽しみにのに、博多駅改装に伴い閉店していたらしい。アイスだけじゃ空腹が満たされない夫婦は、剣呑な雰囲気で小競り合いをしながら福岡駅を徘徊。無い。無いわ腹減りだわ無いわ腹減りだわのループ&ループ。幾ら探しても無いので仕方なく、マイング内のAPETITO Cafeなるイートイン併設のパン屋でホットサンドセットを注文した。
イートインのメニューには目玉焼きがあったりホットサンドがあったり、東京では見たことが無い形態のパン屋だなーと思っていたら、ロイヤルホストでお馴染みのロイヤルホールディングスが経営するパン屋さんなのであった。東京では表参道に一軒あるのね。旅行先で温かいものを食べられるって、嬉しいなー。お腹が満たされていれば何でもいいわー。
 

    

 
長崎までは10時20分発の特急かもめ15号で128分。その前に博多駅で行列が絶えないミニクロワッサンの店で、普通のミニクロワッサンと薩摩芋のクロワッサンを100gずつ(普通のが4個、薩摩芋は3個だった)を買い込む。いや…だって長崎で何処も入れなくて、お腹空いたら嫌だなって…。お腹空くと直ぐ暴走時のエヴァみたいなものに変身するから…。
本当は長崎で一泊したかったのだけれど、ホテルがちっとも取れなくて日帰る事になったのだった。うっかりホテルにガイドブックを忘れ、博多駅で貰ったパンフレットには長崎ランタンフェスティバル(公式サイトは音が出るのでwikipedia)なるイベントがどどーんと掲載されていた。これか! 長崎でちゃんぽん食べてぶらぶらするか。旧正月だったから、ちょっとはその雰囲気味わえたらいいねー位のプランしか持ち合わせていなかったのでこれは嬉しい。早速、JR長崎駅の目の前にある路面電車に乗って、新地中華街を目指す事にした。
 

    

 
その長崎ランタンフェスティバル、寡聞にして耳にした事が無く、携帯で調べてもいまいち規模が掴めない状態だった。んが、路面電車を何台見送ってもすし詰め状態なので何と無く察した。だって駅前に人が居ないのに、路面電車はぎゅうぎゅうなんですのよ奥様。
 

    

 
新地中華街は、横浜中華街に比べて落ち着いた雰囲気の街だった。そして路地という路地には沢山の中国提灯がぶら下がっていて、とても綺麗。丁度昼時という事もあってか、沢山の人が上を向いて歩いたり立ち止まって写真を撮ったり。空には飛行船まで浮かんでいる。
少し遅い朝食を摂ったので、約一時間待ちと言われた江山楼という店に名前を書いて、新地中華街周辺を散策する事にした。
  

    
    

 
で、猫発見。大層度胸のある猫で、まだ子猫だし野良だろうし、なのに買い食いしている人間の足元に来てはにゃーにゃーにゃーにゃー。猫水跨いでにゃーにゃーにゃーにゃー。めだか師匠は猫水に囲まれたら死んじゃうのに。近寄っても撫でても逃げない。寧ろ向かってくる。兄弟らしき猫まで出て来て、ああもうちゃんぽんなんて暫くはどうでもいい。てれんてれんに溶けかけたまま、もう少しあちこち見ようかと夫に引き摺られてメイン会場へ行けばそこにも猫。嗚呼あそこにも猫。
溶けかけたまま、それでも我に返って見渡したメイン会場の其処此処に設置されていた様々なランタン。虎だったり竜だったり、と思ったら恐竜だったりして割とフリーダムな感じ。竹とサテンで造られたと思しきそれらを昼間に見ると、一時期話題になった、中国の偽ガンダムを思い出してしまうのであった。そうか、あれはこうやって造ったのね…結構丈夫ねー。
 

    

 
江山楼のちゃんぽんは、長崎出身の人に言わせるとちょっと変化球なちゃんぽんだったらしい。とてもクリーミーな、言い方は悪いけど薄いホワイトシチューのような滑らかさ。変化球でも何でもいいや、うーまーいー。殆どのテーブルに乗っていたのにつられて頼んだ東坡肉も、柔らかくて見た目よりかなり薄味。ボリュームたっぷりのちゃんぽんを平らげた後、ほんのり甘い花巻に挟んだ東坡肉をフガフガと味わったら苦しい程満腹になった。うまい…苦しい…うまい…。
春雨のラーメンの様な熊本名物太平燕もあったのだけれど、頼まなくて本当に良かった…。
 

    
    

 
苦しい腹を抱え、夫は二回も行っているグラバー園へフラフラ向かう。ベンチがところどころにあって眺めが良くてという場所といったらグラバー園だろうと。妻は正直何でもいい。この恐ろしい程の上り坂を進まなければならない事実が辛い。コフー。
途中、皇帝行列? 仮装した人々の行列に行き逢ったのだけれど、西洋の人が扮装していたり、ミス長崎らしき女性が私好みの美しさ可愛さで夫婦揃ってめろんめろんになったりと旧正月そっちのけ。ちゃんぽんを食べた今、旧正月は終わったのである。香港上海銀行長崎支店記念館を眺めても、大浦天主堂を見学しても、あんまりピンと来ない。綺麗だなとか、切支丹は大変だったんだなとか思うのだけれど、胃に血が集まっていてごめんなさいという気持ち。
唯一張り切ったのは、大浦天主堂近くで猫が毛繕いをしているのを見つけた時だった。猫はいい…。
 

    
    

 
それでもくちた腹を抱え、急な坂道や階段を上って辿り着いたグラバー園はとても素敵だった。和洋折衷な建築、吹き流しで作られたガラス、隅々まで凝った装飾。何故か書斎の隣に風呂場があったりして、それも面白い。
それにしても異人さんの、自分達の生活スタイルを固持する様はすごいなー。大きな西洋箪笥やベッドやソファーや…全部これ、船で運んで来たのか…。何処の洋館に行っても毎度感心する。もし自分が海外で長い事暮らすとしたら、どうするのかなあ。
 

        

 
グラバー園の向こう側、湾を挟んだ造船所では修理をされているのか自衛艦が碇泊していた。中華街で見かけた飛行船が長崎の街をぐるぐると周回していて、色々な国の言葉が聞こえていて。ここに原爆が落ちたなんて信じられなかった。
そう、私は原爆記念碑等の場所に足を向けられなかった。時期が時期で、受け止め切れないという気持ちもあったし、ちょっとついでにという気分で寄りたくなかった。ただ、目の前に広がる風景を見るだけで精一杯だった。…ちゃんぽんちゃんぽん連呼してましたが。あと、グラバー園を去る時に道端に居た猫提灯二匹にてれんてれんになってましたが。他にも沢山見たし、長崎は猫天国ですな! あとラブアンドピースな!
 

    
    
    

 
テコテコ坂を下りた頃には、日暮れが始まろうとしていた。長崎は博多より更に日没時間が遅く、見たことの無い風景と併せてますます異国気分。眼鏡橋まで歩いている内にランタンに灯りが点り始め、暗くなる頃には夢みたいな光景が広がっていた。十二支を模ったランタンの尽くが眼光鋭いのには笑ってしまったけど(兎も犬もこんな目つき)。そして減る腹。ムード台無し。
 

    

 
ところで卓袱って書いてしっぽくと読めますか、私は読めませんでした。夫が私と長崎に来たがった理由が「一人じゃ入り辛い! 寂しい! 卓袱料理食べたい!」という、お前がさびしんぼじゃー! と言いたくなるものだった。フフ、愛い奴め…。では目指そうじゃないか、卓袱料理屋なる店へと。
実は特に目指す店も無かったので、食べログで評価の高かった長崎卓袱浜勝さんへ入ってみた。卓袱台に何か色々乗っていて、異人さんをもてなす為の料理だったという知識しか無いんだけど、それで良かったらしい。座敷には赤い卓袱台が並び、それを卓袱(しっぽく)と呼ぶそうだ。
その卓袱料理、最初は吸い物から始まり、最後は甘味で〆るものらしい(詳しくはこちらで。そうか、ここはリンガーハット系列だったのな)。それから、昔はとても貴重だった砂糖を使った料理であるとか(出島があったから、砂糖が割りと手に入り易かったのですって)。刺身・焼き物・煮物・揚げ物等が並べられ、ご飯の入ったお櫃がやってきた。詰まりはちょっと甘め、且つ一気に来る会席料理みたいなものだった。流石港町、刺身の角がピシッとしていて歯ごたえがあるよー。東坡肉とはまた違った風味の角煮もうまーでした。美味しいものをちょっとずつ色々食べられるって、贅沢だ。
  

    

 
やっぱり苦しくなりながら、路面電車が混雑しているのが嫌でまた歩く。昼間「偽ガンダム…」と呟いてしまった新地中華街のメイン会場まで。偽ガンダム達(違う)も、とても綺麗だった。
普段目にする提灯(not 赤提灯)は侘び寂びといった風情なのに対し、中国の提灯はカラフルでひたすら楽しげ。偽ガンダムも点灯させるつもりだったのかなーと、どうも偽ガンダムから思考が逃れられないまま帰りの特急までの時間を楽しく過ごした。雑技団の人の曲がり具合に仰天したり。猫より柔らかいよ…。
 

    

 
長崎からの列車は21時31分長崎発の特急かもめ52号。白いかもめなる愛称があるらしい。それに、普通車両でも革張り(合皮だけど)のシートだったり、シートピッチがゆったりだったりで夫が大好きな列車なんだそうだ。あと白いソニックとか何とか言ってたな…(うろ覚え)。
妻にも普通の特急との違いを感じて欲しい、そんな夫の気遣いも台無しにして長崎まで熟睡。車掌さんが来た時に切符が
見やすいようポケットが前列座席頭部に付いていたので、検札の為に起こされる事も無く尚更快適。JR東海・東日本にも取り入れてくれたらいいなあ。
 
結局、往復の特急と路面電車に乗った以外は徒歩だった長崎滞在。祇園のホテルまでも博多駅から意地で歩いてしまい、部屋に辿り着いた時には二人ともよれよれだった。何故毎回毎回、私達はこんなに歩くんですか夫よ。
しまった、万歩計アプリ起動させておけば良かったと後悔しながら、寝酒にと少しだけ晩酌をして床に就いたのは午前1時を回った頃。夫は寝入るまで「明日仕事行きたくない」と呟いていた。明日から普通に仕事なのに、全力で遊んでしまったね…。