矢と綿毛。

yukami_dna2008-07-31


会議で遅くなった私とミタニさんの帰り時間がかち合ったので、今夜は家の近くの、素晴らしく美味しい料理を出す居酒屋で飲んだ。家の周りには地味ながら美味しい飲食店が幾つかあって、再来年引っ越すのが今から寂しい。
ミタニさんはよく歌を歌う。替え歌だったり、自分で適当に作った歌だったり。釣られた私が歌を作ってみても、炭団の様な腹黒さが滲み出てしまう。ミタニさんが繋げるような、可愛らしい歌詞にはならない。私が繋げる言葉が矢だとしたら、ミタニさんの繋げる言葉は綿毛なのだ。そんな他愛も無い時に、生い立ちという言葉が頭を過ぎる。瞬きの間。悲しい事では無いのだけれど。
 
酔ったミタニさんは何時にも増して替え歌を歌う。今夜も機嫌よく酔っていて、私は僕の宝物と楽しそうに歌う。私はただ、にっこりと笑う。柔らく解かれた心で。綿毛のように。