東の空につばさが 消えてしまうと

yukami_dna2008-09-23


日帰りでは間に合わないからと、出張の為空港に向うミタニさんと共に羽田空港へ行った。小さな頃母と弟と、父をよく迎えに行った場所。鯨みたいなシェル石油のスタンドや空を仰いで回るレーダー。もうその頃の面影は何処にも無いけれど、それでもやっぱり懐かしい場所で。だからミタニさんを見送った後、ターミナルをまたいで隅々までクルリクルリと歩いて回った。
空港で一番好きな場所は、展望デッキだ。休日の展望デッキはどちらのターミナルにも沢山の人が居て、鉄の塊が忙しく飛び交う様子を嬉しそうに見上げていた。西の空は金色に輝きながらヤコブの梯子を地上に下ろし、その中を飛行機が短い間隔で急旋回しては下降、或いは陸を離れていく。一幅の絵のような光景。忙しないのに、心が平らかになる。整備士が滑走路に向かう機体に向かって手を振る光景だけは、見る度に涙を堪えられなくなるのだけれど。
 
空港を特別な場所に思うのは、鉄道とは違い、多くの人には日常で無い場所だからだろう。私の場合、懐かしさも大いにあるけれど。本当は何時何処にでもある、さようならや行ってらっしゃい、お帰りなさいを強く意識するからではないかしら。喚起されるまで忘れている、それ。何かが起こらないと、それまで自分が持っていた幸福に気付かない日々のように。