地震三日目。

yukami_dna2011-03-13

明け方漸く寝付いたけれど、9時半頃夫に起こされた。霞がかった春の空で、眩しく暖かい日。
ずっと家に居てニュースを観ていても不安になるだけだし明日ホワイトデーだし、折角無事なんだから楽しめる内に楽しもうと夫が言うので今日も出掛ける事になった。暑い位の陽射しで気持ちいい日なのに、ふわっとした感覚が抜けなくて現実感が無い。
今日の浅草も人力車がお客さんを乗せて元気に走り、仲見世に観光客が溢れ、浅草寺で沢山の人が祈っていた。外国から来た観光客の人達も、日本に来たんだから観光しなくちゃ! とばかりに写真やビデオを撮っていて普段とあまり変わらないようだった。普段の1/3位の人出だったけれど。
 
西浅草で生まれた私のソウルフード大黒家の天丼とかきたま椀なのだけれど、何せおばちゃんたちの評判が悪い。赤ん坊の頃から通っているから慣れているものの、それでもムッとする事がある位には態度にムラがあると思う。平日の夜でもない限り、常に行列しているし。
が、今日の大黒家は違った。すんなり入れた上、おばちゃんたちは愛想がよく、優しかった。これも地震のせいなのか? 誰も彼もが親切でにこにこしていて、失礼ながら正直、店を間違えたと思いたかった。ますます現実感が無くなるじゃないか。それにしても相変わらずおいしいな! 黒々としたつゆがかかった江戸前天麩羅に、それが染みたお米。ぴりりと生姜の味がする熱々少し甘めのかきたま椀。本館・別館共に売っている揚げ玉(これもとってもおいしい)をいただいて、店を辞する頃には幸せでにこにこしていた。江戸前の具材は軒並みやられていて暫くは食べられないだろうから、しっかり味わわせていただいた。
 
銀座線も、日本橋三越も軒並み空いていた。
けれど地下食料品街の店員さんたちは皆元気良くにこにこと、何時もみたいにいらっしゃいませと客を呼び込む。目当てのラデュレといえばそこだけ人だかりが出来ていて、買い終わってみれば後ろに並んでいる殿方の中に70代位のおじいちゃんが居た…粋な御仁だ。
夫は私にホワイトをデーしたのに満足したのか、鉄道雑誌を読みに本屋へ行きたいとそわそわし始めたので浅草で別れた。まだまだ陽射しが強く、少し夏を思い起こさせる陽気にぱっとした気分になりたくなって、23番地カフェヴァイツェンをテイクアウト。道々飲みながら歩いて帰っている内に楽しくなって、それで漸く、自分を包んでいたふわっとした現実感の無さが薄れてきたのが分かった。そうか、思った以上に怖いんだな私。地震直後からずっと。
 
同じ人が沢山居ると思う。被災地程じゃないけれど、東京近郊の人達だってとても怖い思いをしたんだから、すごくダメージを受けていると思ってもいいと思う。怖い、寂しい、不安だって事を口にしたらいけないなんて馬鹿な事は無い。口に出すことで、そういう気持ちを共有する事は、ダメージを受けた心を和らげる事に有益なのだから。
誰かを攻めたり、揚げ足を取ったりするより助け合おう。悲しければ悲しいって泣こう。笑えるなら、思いっきり笑おう。
 
折角夫が買ってくれたラデュレのマカロンだけど、外食して帰宅した直後から夫が夢の国へ旅立ってしまった。ちっとも認めやしないのだけれど、夫もかなりストレスを感じているんだと思う。一人で食べるのは可哀想なので、明日の朝一緒に食べよう。