嫁ぐ朝。

嫁ぐ実感の無いまま挨拶をし、父に駅まで送られた。無言の車内で何か話そうかと思ったのだけれど、今朝見た夢の話をぽつりとしただけだった。
実家の庭には今年も沢山の柚子が実っていて、明るく輝く果実を見ながら母の事を思い出した。もし生きていたら、きっと素っ気なく早く行きなさいよと急かされたろう。あの人はそんな風に照れ隠しをする人だった。無言のまま、見送ってくれた父と同じで。
 
ま、入籍した足でまたとんぼ返りして、実家で宴会なんだけどね。